2020年11月1日日曜日

片岡義男『カレーライス漂流記』

カレーライスといえば、子どもの頃母がつくった、おそらくグリコワンタッチカレーか明治キンケイインドカレーであろう、黄色いルーを思い出す。
次なるカレーライスの思い出は学生食堂にある。他のメニューにくらべ、カレーは大量生産大量消費に向いていた。高度経済成長の時流に乗ったカレーライスは時代を象徴する食べものだった。
いろいろなところでカレーライスを食べてきた。喫茶店やホテルのレストランで食べるカレーライス。これは欧風カレーなどと呼ばれることが多いが、ヨーロッパの人が好んでカレーライスを食べるシーンは想像しにくい。高級なものだとちょっとした鰻の蒲焼きが食べられそうな値段もある。
どちらかというと町の洋食店のカレーライスが好きである。肩の凝らないところがいい。子どもの頃うちで食べたカレーの延長線上にある。蕎麦屋で食べるカレーライスもいい。ニッポンのカレーライスという位置付けが明確だ。味噌汁が添えてあればなおよい。どちらかといえば僕は、カレーライスに関しては味噌汁派でコーヒー派ではない。
最近はインドカレーやパキスタンカレー、スリランカカレーなど本格的なカレーを食べさせる店も増えてきた。あまり行くこともないのだが、それは、なんとかマサラとかバターチキンとか豆とほうれん草のなんとかだとかメニューが(僕にとって)難解なせいだと思う。自分のなかでイメージできないカレーが出てくるのは少し困る。ナンにしますか、ライスにしますかと訊ねられるのもちょっと困る。
まったくもって不勉強きわまりないのだが、片岡義男というと『スローなブギにしてくれ』の原作者であること以外ほとんど知らない(しかもその本も読んでいない)。エッセーなのか、フィクションなのか、なかなかつかみにくい本である。しかし描写は精緻で、なんとなくかっこいい。喫茶店に佇んで、深煎りのコーヒーを飲みながらカレーライスを頬張る風景が目に浮かぶ。

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