2020年5月7日木曜日

松岡正剛『日本文化の分析 「ジャパン・スタイル」を読み解く』

2009年から11年まで3年にわたってNHKで放映された「坂の上の雲」をもういちど見ている。厳密にいえばリアルタイムでは断片的にしか見ていないので、今回はじめて見るに等しい。
当時は司馬遼太郎を読む習慣がなかった。もちろん『坂の上の雲』という題名は知っていたが、いつ頃のどんな話だったか皆目見当がつかなかった。大学生の頃だったか、高校の先輩に絶対読めと言われていたが、読まないまま30年が過ぎていた。『竜馬がゆく』や『関ケ原』なら、だいたいの時代背景や登場人物が想像できる。『坂の上の雲』ではわからない。ヒントがなさすぎる。
NHKでオンエアされたドラマは、生涯で唯一、坂の上の雲に接する機会だったかもしれない。それなのに断片的にしか見なかったのは痛恨の極みであった。わずかに残された生命を削って執筆を続ける正岡子規の印象が残っている(というかその程度の印象しか残っていない)。
ふとしたきっかけで司馬遼太郎を読むようになり、幕末から明治へと時代をたどった。とりあえず設けた最終ゴールが『坂の上の雲』だった。2016年のことだ。
あらためてドラマを見ていると、この長編小説が重厚壮大なテーマを持っていたことに気づく。それは、はじめて世界の大きさを知った小さな島国が近代国家として産声をあげるとともに、一気に成長を遂げようとするエネルギーの提示である。近代日本の原点は、まさにここにある。
知の巨人松岡正剛。その新作を読む(というほど多くの著作を読んでいるわけではないが)。
日本文化とは何か、日本らしさとは何か、その特色は何か。さまざまな側面から日本文化の理解をはかる。その視点の数々は膨大な読書体験がベースにある著者ならではのものだ。
「歴史は言葉づかいの組み立てでできている」という。現在意味を変えて流通している言葉の起源が想像もつかないような別の言葉だったりする。そういったものの見方に吸い込まれていく思いだ。

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