2020年1月20日月曜日

瀬尾まいこ『図書館の神様』

2020年の全日本卓球選手権男女シングルスは、東京オリンピック代表が相次いで敗れた。
男子決勝では一昨年の覇者張本智和が、3連覇をねらう伊藤美誠が女子準決勝で敗退。女子はここ数年、伊藤、平野美宇、今回優勝の早田ひななど実力が拮抗した若手が台頭している。男子は水谷隼が06年から18年までに10回優勝(準優勝3回)しており、絶対王者の感があった。
かつて、男子では斎藤清がシングルスで8度優勝を飾ったことがある。80年代も絶対王者の時代だった。一昨年、当時14歳の張本智和が決勝で水谷を退け、しばらくは張本時代が続くものと思っていた。卓球界はいよいよ戦国時代に突入したのかもしれない。男子優勝の宇田幸矢もさることながら、準決勝で張本に敗れた戸上隼輔(インターハイ2連覇)は、これまでにないパワーの持ち主で、打倒中国に向けて新戦力登場といった印象だ。
50~60年代、卓球日本として世界にその名をとどろかせていた時代、荻村伊智朗が日本のエースだった。荻村は国際卓球連盟会長として卓球による親善外交や競技の普及、イメージアップに尽力した人としても知られているが、男子シングルスで世界選手権を2度、団体で5度制覇している。ところが全日本卓球選手権大会男子シングルスにおいて荻村は一度しか優勝していない。これは荻村伊智朗が国内の選手に弱かったということではなく、当時の日本卓球がハイレベルだったことを物語ってはいないだろうか。高いレベルで切磋琢磨していた時代といってもいいだろう。
絶対王者の時代から群雄割拠の時代へ。テレビで男女シングルスの試合を見て、日本の卓球に希望が持ててきた。
はじめて読む作家である。どろどろしてそうでいてピュアな空気が漂う。静かな映画を観ているような気分。今風の清々しい小説だ。
ところで、ここしばらく卓球の神様は、中国に居ついているが、そろそろに日本にもやってくるかもしれない。

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