2018年6月20日水曜日

山本周五郎『栄花物語』

ずいぶん昔、ショパンのCDを買った。CD=コンパクトディスクの時代だから、レコードしかなかった学生時代ではない。1980年代の半ば以降だろう。
マット・ディロンがサントリーのテレビコマーシャルに出演していた。シルキーというウイスキーだった。ディロンがウイスキーを飲んでいるとどこからともなくピンクの象がやって来る。
ナレーションは「時代なんか、パッと変わる。サントリーリザーブシルキー、新発売」である。不思議な空気に包まれたCMだったが、とりわけバックに流れる音楽が印象に残った。コピーライターは秋山晶で氏の作品集にクレジットが掲載されている。使用されている楽曲はショパン作曲マズルカ第38番作品番号59-3。
というわけでCDを購入したのである。ピアノはウラディミール・アシュケナージ。マズルカはポーランドの民族舞踏の形式のひとつで基本は4分の3拍子。ということは後日知る。ルービンシュタインの音源もある。これもまたずっと後日に知る。
高校時代の日本史だったか、大学での一般教養の講義だったか思い出せないけれど、江戸時代に田沼意次という政治家がいて、大商人と手を組んだ腐敗政治の人で後に失脚し、松平定信が登場したみたいな話を聞く。当時の若者にわかりやすくたとえると田沼意次が田中角栄で松平定信はその後を受けた“クリーン”三木武夫だということだった。
昭和の成長期を支える多くの立法にたずさわった田中角栄は時代を読み解く知を持ち、民衆の心をよく理解していた(最近田中角栄の本が多く上梓されている)。商業の発展が幕政を圧迫するであろう先々を見越していた田沼意次と重なり合うところがたしかにある。歴史の授業では通り一遍に悪の政治家で終わってしまうことが多いようだが、実は有能でかつ質素な生活をしていた人なのだ。
本当のところはどうだがわからない。が、山本周五郎がそう書いているのだから、おそらく間違いないだろうと思っている。

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