2017年7月24日月曜日

吉村昭『七十五度目の長崎行き』

ちょうど昨年の4月と7月に仕事で長崎を訪れた。
波佐見という町にある小さな社がある。水神宮という。土の神様と水の神様が祀られている。その社殿に奉納される天井画を取材した。はじめての長崎だった。というかはじめての九州だった。
仕事で行く旅は味気ない。効率が最優先されるからだ。
早朝の飛行機、レンタカーでの移動、宿の近くで夕食。翌早朝から取材・撮影して、最終の飛行機で帰京する。仕事だからといえばそれまでだけど、それでも長崎に行ってきたというと眼鏡橋は見てきたか、グラバー園には行ったのか、ちゃんぽんは食べたのかと訊ねられる。行ったところは波佐見という焼きものの町で長崎市街にいたのはほんの2時間ほどだ。三菱重工長崎造船所もシーボルトや坂本龍馬ゆかりの地もまったく訪ねていない。
負け惜しみではなく、多くの人が想像するのと少しちがった旅ができるのはそれはそれでうれしいこともある。
長崎空港から波佐見町に行くにはJR大村線に沿った国道を北上する。川棚という小さな駅(これがなかなか風情のある駅なのだ)を目印に川棚川沿いを上流に行ったあたりが波佐見町だ。このあたりは穀倉地帯で麦畑がどこまでもひろがっている。仕事の合間や移動中にレンタカーの窓から見た風景こそ何ものに代えがたかったりするものだ。
ちなみに朝9時過ぎに東京駅を出発すると川棚駅に16時半に着く。乗換はわずか2回である。いまどき陸路で長崎に行くのもどうかと思うが、思いのほか遠くない(波佐見町のもうひとつの入口JR佐世保線の有田駅なら乗換1回で16時前に着く)。いつかそんな旅をしてみたい。
吉村昭は長崎を舞台にした作品をいくつも書き上げている。その訪問回数は100を超えるという。そのほとんどが資料収集や取材などの仕事だったわけだからやはりあわただしい移動のくりかえしだったのではないだろうか。
移動の車窓から吉村昭はどんな風景を目にしただろうか。

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