2016年6月23日木曜日

吉村昭『東京の戦争』

春野球はとっくに終わり、夏野球の季節だ。
この春は数戦しか観ていない。ちょっと興味が薄れたせいだ。
2011年夏の甲子園優勝の日大三。その主力5人が東京六大学にすすんだのが、翌12年春。エースの吉永、トップバッターの高山ら1年生の活躍が目立った。楽天イーグルスで活躍している茂木も含めてベストナインに3人の1年生。日大三優勝メンバーの慶應横尾、法政畔上、立教鈴木以外にも明治坂本(履正社)、菅野(東海大相模)、立教大城(興南)早稲田重信(早実)と全体としてレベルの高い世代だった。そしてこの春こぞって卒業した。ついつい球場から足が遠のいてしまったのは、誰を観にいこうか、という興味が薄れたからに他ならない。
東京六大学野球でいえば、昨年まで世代的に強かった4年生に依存してきたチームは苦戦を強いられた。早稲田が典型的だ。1学年下にエースが残った明治(柳)、立教(澤田圭)、慶應(加藤)がリーグ戦を盛り上げた。強い世代が抜けて、全体のレベルが下がるという見方はちょっと極端すぎるかもしれないが、リーグ戦で東大が3勝したり、その後の全日本選手権で東京六大学も東都大学も早々に姿を消したのは各大学の戦力が接近して団子レースになったからではないか、などと思っている。
最初に読んだ吉村作品は『羆嵐』だった。それから人に勧めらるがままに『三陸海岸大津波』、『関東大震災』を読み、そして災害三部作(なんていう言い方はされていないけど)の三冊目としてこの本を選んだ。
特定の人物の視点からではなく、戦争というものが、空襲というものが淡々と綴られていく。政治や思想ではなく、戦争とともに戦争そのものを生きた庶民が見たままの戦争だ。
吉村昭は東京日暮里の生まれという。あの戦争で東京の東半分はほぼ焼き尽くされた。それでもときどき歩いていると空襲で焼けなかった一角という場所が70年以上の時を隔てて残っている。奇跡といっていいだろう。

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