2010年12月5日日曜日

千尋『赤羽キャバレー物語』

キャバレーと呼ばれるところに行ったことがない。
以前勤めていた会社の近くに「白いばら」というキャバレーがあり、社長はよく通っていたという。行ったことがないので勝手なことしか言えないけれどホステスさんが大勢いて、ショウがあって、ダンスをしたりする昭和の社交場というイメージが浮かぶ。先の社長もダンスが大好きな人だった。
ぼくは近ごろ(今にはじまった話ではないのだが)、“昭和”に凝っている。古い居酒屋や情緒のあるスナック、さらにはこれらのお店が息づいている風情ある街を歩いてみたいと思っている。
毎日新聞の夕刊、たしか毎週土曜日だと思うが、東京すみずみ歩きという川本三郎のコラムがあり、古き良き東京に独自の視点を投げかけている。そこで紹介された赤羽の町がこの本を読むきっかけになった。記事では司修の『赤羽モンマルトル』とこの『赤羽キャバレー物語』が紹介されている。『赤羽モンマルトル』は現在捜索中である。
著者の千尋は紆余曲折の人生を経て(おそらくこの本に書かれている以上に紆余曲折があったんじゃないかと思う)、川口、赤羽でホステスとして生きる。この本は彼女のホステスの日々を率直に綴ったもので読みすすめればすすめるほどに味が出る。ホステスという職業が主役なのでなく、つまり接客業という狭義のエピソードではなく、人間対人間の、思いやりだとかコミュニケーションのあり方が語られているのだ。
ひとりの人間がひとつの職業を、生涯を通じて全うするためには単に資質だけではなく、日々努力研鑽する姿勢がなによりも大切なのだと大げさではなくそう思った。

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