2024年2月13日火曜日

カート・ヴォネガット『ホーカス・ポーカス』

テレビでデイブ・スペクターを視るたびに、なんでこの人は日本の文化や風土、日本人の感情を日本人以上に理解して日本語を話すのだろうと驚愕する。まるで脳内に人工知能を所有しているように思える。それでいてけっして賢ぶらない。面白くとも何ともない駄洒落やギャグを連発する。「笑点」の大喜利レベルである。それだけ見ているとおバカな外国人だが、彼はそれをねらっているのだ。どれくらいの笑いのレベルが平均的な日本人に受けるのかを知っている。そこがすごい。あの風貌で確実に日本人と同化している。
たぶん(そんなことは決してしないだろうが)本気で日本の政治や文化の劣化をぶった切るような論評をするとしたら、相当ハイレベルな発言をするのではないかと思っている。
もはや彼はアメリカ人ではない。藤田嗣治が日本人ではないように。
翻訳されているカート・ヴォネガットの小説はほとんど読んでいる。何年か前に『タイムクエイク』という大作を読んで、『ガラパゴスの箱舟』『青ひげ』『ジェイル・バード』を再読した。これでひと通り読んだなと思っていたところ、もう一冊未読の小説が見つかった。それがこの本。ホーカス・ポーカスとはどういう意味かよくわからないが、魔法使いが魔法をかけるときに唱える呪文のようなことらしい。だから意味がなくていいのだ。ギャツビーの「オールド・スポート」みたいなものだ。
カート・ヴォネガットの比喩は深い。ちょっとやそっとじゃ理解できない。立ち止まってばかりいる読書。それでもキンドルのおかげで、すべてではないけれど、知らない言葉や出来事は検索してくれる。大いに助かる。
原書でヴォネガットを読むという知人がいる。村上春樹も私的読書案内で推している。英語で読むとさらに面白さが見つかるのだろうか。僕は翻訳を読むので手いっぱいなのだが。
ところでカート・ヴォネガットを読むたびにデイブ・スペクターを思い出すのはどうしてなんだろう。

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