2021年6月30日水曜日

青木美希『いないことにされる私たち 福島第一原発事故10年目の「言ってはいけない真実」』

行政の仕事はサービスであるといわれているが、あまり効率のいい仕事ではないような気がしている。住民票1枚請求するだけでも、本人が不自由な暮らしをしているとすると代理人が委任状をもっていかなくてはならない。委任状すら書けない人も多いはず。それでも委任状を本人に書いてもらってくださいと窓口は言う。不正をするかもしれないと住民を疑っているのだろう。ここで少し暴れると事情を察してくれる(すごすごと引き返す人は委任状を捏造して、後日窓口にやってくる)。それでいて利用目的があいまいな住民基本台帳の大量閲覧は後を絶たない。
国と自治体との連携もあいまいな部分が多い。新型コロナのワクチンが供給できるという連絡を受け、自治体で予約を行う。ふたを開けるとじゅうぶんなワクチンが確保できていなかったという事例もあるという。何をやっているのか、日本の行政は。
福島の原発事故から避難を余儀なくされた人が、自主的な否かを別にして大勢いるという。県外に避難して、住宅供給の援助を受ける。やがて援助が打ち切られる。彼らはこの時点で避難者としてカウントされなくなる。どう考えても理不尽である。
かつての避難区域も避難指示が解除され、帰還困難区域を残すのみとなっている。多くの避難者が避難区域に戻ってきたかといえば、けっしてそうではない。医療体制の復興が追いついていないというのが現状で懸念をもつ避難者が多いのだという。避難による人口流出で税収も減っているはずだ。医療復興は遠い道のりなのかもしれない。
東京電力が被害者に支払った損害賠償は10兆円を超えている。それも避難指示区域(福島第一原発から30Km圏内)の被災者に限られることで、みにくいやっかみも生まれる。原発の廃炉まで40年かかると言われている。福島の完全な復興まではもっとかかるのではないだろうか。
それにしても長男に自死されたおとうさんは気の毒でならない。

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