2018年5月16日水曜日

新村出『広辞苑先生、語源をさぐる』

自分で書き間違えをするのに自分では気が付かない。だから誤記が多いわけだが、そのくせ人の間違いにはよく気が付く。狭量な人間なんだと思う。
広告の仕事をしている。広告主名や商品・サービス名は絶対に間違ってはいけない。本業である表現のことより、誰かが書いた誤記が気になることもある。キヤノンを平気でキャノンと書く人がいる。キューピーマヨネーズなどと書く人もいる。富士フイルムであり、フィルムではない。ナカグロが入るのか入らないのか気になる社名もある。そんなことは世の中的にはどうでもいいようなことなのだが、広告をつくる人としては気遣いが必要だろうと常日頃思っている。
キヤノンがキャノンにしなかったのはロゴをつくる際、「ャ」が小さいとバランスが悪かったからだ聞いたことがあるが、本当のところは知らない。
ロゴマークと英文表記をごっちゃにしている人も時折見かける。ソニーはSONYと表記してはいけない。Sonyである。ホンダもHondaだ。もちろんこれもまたどうでもいいことかもしれないが、少なくとも広告の仕事をしている人としてはできれば間違えたくないところだ。
かく言う自分ももう30年近く前、広告主であるとあるシャッターメーカーを〇〇シャッターとやってしまったことがある。正しくはシヤッターである。この「ヤ」もキヤノンと同様デザイン的な見地から決められたのだろうか。
新村出といえばおそらく日本人では知らない人はいないであろう広辞苑の著者である。
辞書をつくるというのはどういう仕事なのか。以前読んだ三浦しおんの『舟を編む』以上の想像ができない。
小学校の頃だったか、語源辞典なるものがあってたいそうおもしろいと聞いたことがある。そもそも、「そもそも」はおもしろいと思う。長年言葉の専門家であり続けた新村先生は小難しいことを避ける。さらりと語源に触れ、それにまつわる話を聞かせてくれる。
巨人とはこういう人のことを言うに違いない。

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