2017年4月20日木曜日

平松洋子『サンドウィッチは銀座で』

グルメという言葉が一般に使われはじめたのはいつ頃からだろう。
少なくとも学生時代にそんなしゃれた言葉は流通していなかった。バブル経済とかおそらくそんな時代背景の中で使われるようになったんじゃないだろうか。もちろん昔から美食家であるとか、食通と呼ばれる人がいた。おいしいラーメン、蕎麦、寿司、うなぎ、とんかつ、ステーキなどにやたらと詳しい人がいた。
「グルメ」はいわゆるグルメ本とともに普及した。おいしい店は活字になり、写真になり、書店に山積みされた。さらにグルメは映像と音になって電波に乗った。日本全国津々浦々をかけめぐった。温泉とグルメさえおさえておけばそこそこのテレビ番組ができた。
やがてインターネットとソーシャルメディアの時代になる。活字や写植、電波に乗った映像以上の方法量がデータ化されて世界中を飛び回っている。多数決で民主的に決められた最強グルメのお店に連日行列ができる。何時間も並んだ末、スマートフォンやデジタルカメラで撮影されたデータはさらに世界をかけめぐる。
それはそれでいいとして、本当においしいものは食べるその人にとっておいしいものだ。
おいしいものをおいしく食べる人がおいしいものに至るまでの道のり。これこそがソーシャル時代のグルメ情報に著しく欠如している点ではあるまいか。著者が料理を頬張る時空間を共有し、そこに身をゆだねる。そうした追体験を可能にする情報が何よりもおいしい。
昨夜、この本を読み終わって明日(つまり今日)のお昼はサンドウィッチにしようと思った。
仕事場から歩いてすぐに行けるチョウシ屋でダブルコロッケパンとダブルメンチパン。天気もいいことだし、そのまま祝橋公園に腰かけてぺろりと食べてしまった。アツアツのコロッケがうまかった。
やはり東銀座にある映像の編集スタジオに何日もこもって仕事をしていた十数年前を思い出した。
引き続き、『ステーキを下町で』を読みはじめている。

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