2014年9月29日月曜日

山本周五郎『季節のない街』

高校野球の秋は新チームの春である。
夏の選手権大会が終わって、大阪桐蔭が全国の頂点に立ち、最上級生はこれで引退。2年生と1年生による新チームがスタートする。各都道府県で地区予選がはじまり、11月には各地区の優勝チームが神宮球場に集まる。明治神宮野球大会だ。
東京では48のブロックにわかれて予選を行い、勝ち上がったチーム同士でトーナメントを行う。昨秋予選を勝ち上がった小山台が堀越、早実、日大豊山と強豪私立を破って8強に進出し、21世紀枠でセンバツ出場を果たした。記憶に新しいところだ。絶対エースのいた昨年のチームにくらべると投手力に難はあるものの、今年の小山台もいいチームだ。初戦で春季都大会優勝の成立学園に逆転勝ち、幸先のいいスタートを切った。惜しくもブロック決勝で関東一にコールド負けしたが、春に向けてさらに力をつけてくれるといい。
今年も10数校の都立校が本大会進出を決めた。今夏東東京8強の雪谷、昨夏8強の江戸川、西東京準優勝の日野など都立校の中にも名門校が生まれつつある。強豪私立と比べれば、練習量や環境など大きな差があるかもしれない。連戦になったときや僅差の試合になったときにその差を痛感することもあるが、手薄なメンバーで重厚長大な強豪校に挑んでいく姿は見ていてすがすがしい。
山本周五郎の『季節のない街』は黒澤明が映画化している。「どですかでん」である。貧民窟のような長屋で夢も希望も抱きようのない最底辺の生活を余儀なくされる人びと。だからといってドラマがないわけではない。もちろん小説だからドラマがないと話にならないんだけど。
周五郎の小説で一貫しているのは善の中にも悪がはびこり、かっこよさの中にもかっこ悪さがしみついているといった確固たる人間観だ。ひっくり返していえば、悪の中にも善があり、かっこ悪さの中にかっこよさがあるということで多くの読者がその登場人物に惹きつけられていく秘密がわかる気がする。
強豪私立校の圧倒的な勝ち方も好きだし、公立校の食い下がるような勝ち方も好きなのだ。

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