学生時代にとんかつ屋でアルバイトしていた。高校の先輩の営む店である。とんかつ屋でバイトといっても華麗にキャベツを千切りにしたり、なにかひとつふたつ揚げ物を任されるなんてことはまったくなく、定食の用意ができるとご飯と味噌汁をよそる程度のことだ。後は昼の客足が引いた辺りでじゃがいもを大量に茹でてポテトサラダをつくったり、明日の定食に添えるおしんこを漬けたり。夜はなめこおろしや板わさなど簡単なおつまみを任されたが、それで料理が得意になるということもなかった。ただ先輩を眺めては飲食店って大変だよなと思っていた。
今では仕事があってもなくても在宅なので、お昼は適当に済ませている。蕎麦やラーメン、パスタを茹でたり、どのみち麺類が多い。この傾向は昔からで昼は蕎麦、ラーメンが圧倒的に多かった。そんなわけでこの小説の舞台はとある定食屋であるが、定食屋のイメージがあまり浮かばない。20代後半になってようやく職らしい職に就いた。仕事場は新宿御苑の駐車場に隣接するマンションだった。出社した日に先輩に連れられて近くの定食屋に行き、メンチカツを食べた記憶がある。その後新しい道ができて、その店はなくなったか、どこかに移転した。
転職した。場所は銀座。ここでも基本は蕎麦、ラーメン。たまに煮魚や焼き魚を供する店で昼定食を食べた。ビアホールのランチにも行ったことがある。が、いずれにしても昼は定食じゃなきゃならないという考えに持っていなかったせいか、この歳になるまで定食屋のイメージがわかない。
定食屋のイメージはわかないが、両親に先立たれても健気に生きる兄妹にはなぜか共感をおぼえる。成仏できない魂を人に乗り移させる神様というのもおかしな設定であるが、それで救われる人がいるのなら大いに結構ではないか。
そんなに楽しいエピソードに出会えるとしたら定食屋をやってもいいかな、
なんてことは思わない。飲食店ってやっぱり大変だ。













