2026年5月29日金曜日

原田マハ『さいはての彼女』

1988年12月にそれまでいた制作会社を辞し、翌月から広告会社に移ることになっていた。ところが11月の給料日に来月から出社しなくていいと社長に言われ、その足で旅行代理店に行って、札幌行きの寝台特急券を購入した。
11月30日。最後の仕事を終え、そのまま上野駅へ。寝台列車のなかでその年の師走を迎えた。
北海道といっても特段行きたい土地はなかったが、高校の後輩が釧路の放送局にいたので訪ねてみるのもいいかと札幌から釧路行きの特急に乗り換えた。
何日か市内を散策したり、湿原に行ったりして過ごし、後輩と酒を飲んだりした。聞いてみると高校の先輩がアナウンサーとして勤務しているという。それで先輩後輩と3人で飲むことになった。
先輩によるとタンチョウヅルを目の前で見ることができる場所があるという。放送局勤務だからそういった撮影スポットをいくつも持っていたのだろう。翌朝、さっそく先輩のクルマで湿原に向かう。滞在中雪はほとんど降らなかったから、この本に出てくる鶴居村の風景には出会えなかった。それでも枯野に舞うタンチョウを見て、北海道にいるんだなと実感できた。
タンチョウヅルにはさほど関心はなかったが、それ以上に興味がないのがオートバイだ。ハーレーダビッドソンだろうが、ドゥカティだろうが、まったく関心がない。僕のような無関心な人間も多いぶん、熱烈な愛情を持つ人間も多いらしい。ハーレーフリークが大勢集まるふたつの短編の中心にいるのがナギという名の女性ライダーである。ナギはハーレーのカスタムビルダーで要はオーダーメードのハーレーを組み立てる職人のようだ。先に書いたように僕はハーレーダビッドソンに興味もなければ知識もない。それでもナギが颯爽と跨り、エンジンをかけて北海道の大地を走る風景は読んでいてくっきりとイメージできる。道がどこまでも続いていくようにそのイメージはどこまでも果てしなくカッコいいと思えるのだ。

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