2025年11月12日水曜日

木村銀治郎『大相撲と鉄道』

ずいぶん 昔の話だが、仕事で名古屋に向かうとき、今日の新幹線はやけに混んでるいるなと思ったことがある。名古屋に着いてその理由がわかった。とある企業の団体客が多く乗っていて大挙して名古屋駅で降りたのである。そのとき東京ドームで都市対抗野球が開催されていて、その前日名古屋市の企業チームが敗退したのである。おそらくは第3試合。ナイトゲームだったので移動は翌日になったのだろう。
相撲は子どもの時分から好きでよく見てはいた。本場所は一月、五月、九月場所が東京で三月は大阪、七月が名古屋、そして十一月が福岡である。本場所と本場所の間には巡業もある。力士たちはずっと部屋にいるのではなく、たえず移動している。その昔は列車を借りきって移動していた。最近では貸し切ることも少なくなり、地方巡業などではバス移動も増えたという。そしてこうした移動を仕切るのが行司の仕事であるという。
行司の仕事は以前内館牧子の本で知った。取組進行や勝負判定、土俵入りの先導などはよく知られているが、初日前に行われる土俵祭の仕切りも番付表を独特の書体で書くのも行司の仕事だし、場内でも決まり手のアナウンスも行司による。そのほか協会の年間スケジュールを決め、巡業などの移動手段を手配するのも行司の役目だ。
もともと鉄道趣味をもっていたという行司が書いた本。大勢の力士を予約通り指定した座席に着かせるなど苦労話が語られる。鉄道趣味があろうとなかろうと相当造詣が深くなることだろう。ただでさえ仕切りが難しい団体旅行。ひときわ身体の大きな力士たちを引き連れての旅は大変な労力をともなうことだろう。
先月だったか、大相撲のロンドン公演が1991年以来34年ぶりに開催された。親方、力士、付け人、行司、呼出、床山ら総勢112名が海を渡った。鉄道にくらべると飛行機の移動はさらに苦労が多いという。ロンドン市民に代わって公演を影で支えた行司たちに拍手を送りたい。

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