関東大震災後の1930(昭和5)年、銀座は一丁目から八丁目まで区画整理がなされた。当時の銀座は西五番街通りから三十軒堀川までで西側には銀座西、東には木挽町という町があった。この区画整理によって尾張町や元数寄屋町といった古い町名が消えた。
戦後GHQの指導で瓦礫処理のため三十軒堀川は埋め立てられた。木挽町は銀座と地続きとなり、町名も銀座東となった。68(昭和43)年、銀座西は銀座に統合され、翌69年には銀座東が銀座に編入され、現在に至る。木挽町は埋め立てられた三十軒堀川から築地川にかけて、その真ん中を昭和通りが昔からそこにあったかのように貫いている。
17世紀に山村座、河原崎座、森田座が開場する。これら芝居小屋は天保の改革で木挽町を追われるまでずいぶん繁盛したようだ。木挽町にはその後、歌舞伎座、新橋演舞場が開場する。どこまでも芝居と縁のある町だ。
一昨年だったか、この本が刊行されたとき著者永井沙耶子がラジオ番組に出演していたのを偶然聴いた。直木賞と山本周五郎賞を受賞しているだけでも興味深かったが(過去に3人いるという)、著者の声を聴いてますます読みたくなった。が、急ぐこともないので文庫化されるのを待った。
このところたまにしか新しい小説を読まなくなったが、たまには読んでみるもんだ。おもしろかった。どうなっちゃうんだこの話と思っているうちに著者の術中にまんまとはまってしまった。気がつけば最終章。そうかそうか、そういうことだったのかと思ったところで読了。
映画化されて来春公開されるらしい。仇討ちの真相を追う主人公加瀬総一郎役に柄本佑、篠田金治役に渡辺謙。そのほか、沢口靖子、瀬戸康史、北村一輝、滝藤賢一などなど。どんな芝居小屋が木挽町に再現されるのか今から楽しみだ。
そういえば、文中は仇討ちだったのに題名はあだ討ち。読みながらずっと不思議に思っていたが、ここではこれ以上書くことはやめておく。
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