2024年7月13日土曜日

三島邦彦『言葉からの自由』

三島邦彦の著書を読む。
これまで多くのコピーライターの本を読んできた。そのなかで谷山雅計『広告コピーってこう書くんだ読本!』(この本は最近増補新版が出ている)と小霜和也『ここらで広告コピーの本当の話をします。』の二冊が印象に残っている。
三島のこの著書は理路整然と系統立てた構成を持っているように見えない(もちろん徒然なるままに書かれた本が刊行されることは滅多にないのだが)。コピーについて、言葉について思いついたまま書き連ねていったような印象を受ける。
「書くことは思い出すことに似ている」という。人は文章を書くとき、自らの人生に積み重ねてきた記憶を掘り起こす(文章じゃなくたって、区役所の書類だって、氏名、住所、生年月日を思い出しながら書いている)。


「記憶の中に散乱する言葉を丁寧に拾い集めるようにしてコピーは書かれる」


的確な指摘である。
またコピーを書く上でつくった自分なりの原則を紹介している。


「12歳までの言葉で書くことだ」


コピー年鑑に掲載されているコピーを眺めて気づいたという。この世の美しいものも大切なものもすべて小学生までの漢字で表現できる。
さらにはスキーマにふれる。
スキーマとはひとつの言語の、それぞれの状況で瞬時に身体が反応するような、身体に埋め込まれた意味のシステムである。seeかlookか、hearかlistenが英語を母語とする人は頭で考えることなく無意識に使い分けている。違和感なく聴きとることができる。このようなスキーマは広告コピーにもあるのではないかと三島は言う。そして広告コピーのスキーマを身につけるにはコピーライターの書いた本を読んだり、養成講座などでプロのコピーライターの生の声を聴くことが必要だ。
本書はいつも身近に置いておいて、ときどき拾い読みするといい。コピーライターを目指す者はまず過去のコピー年鑑を頭の中に叩き込み、次のこの本を叩き込むべきだと思う。

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