お盆。南房総の父の実家に一晩泊まり、墓参りに行く。
朝はやく出かければ日帰りもできるだろうが、慌ただしいのでのんびり東京を出て、その日は父の墓に行き、翌日は隣集落の母方の祖父母伯父伯母の眠る墓所を訪ねる。従兄弟の家をまわり、線香をあげる。
つい何年か前まで房州は昼間はそれなりに暑いけれど日が翳るといい風が吹いて凌ぎやすくなったものだ。窓を開け放つと夜もなんとか眠れる。はずだった。このところの猛暑は情け容赦なく南房総の海辺の町にも襲いかかる。夕食を済ませ、することもないのではやめに寝るとする。ところがこれが眠れない。開け放した窓からほとんど風が入ってこない。扇風機の風を浴びながら何度も寝返りを打つ。夜中にも熱中症になる人が多いと聞く。ときどき起き上がって水を飲む。納戸からもう一台扇風機を出す。
ラジオでも聴こうかとスマホに手を伸ばす。昼間聴きそびれた番組を聴く。それでも眠りは訪れない。ユーチューブで落語を聴く。ときどき水を飲む。とうとうペットボトル2本の水がなくなる。近くの自販機まで買いに行く。時計を見ると午前四時だ。じきに夜が明ける。
先日読み終えたこの本を思い出した。三遊亭圓朝の噺を速記で読みものにしたものだ。録音も録画もない時代に噺を速記で書き留めておく、それだけで圓朝の偉大さがわかる。
ユーチューブには六代目三遊亭圓生の『真景累ヶ淵』がアップされている。たしか三まで聴いている(一から八まである)。四を聴こうかと思ったがやめた。さらに眠れなくなりそうな気がしたから。
結局明るくなるまで起きていた。五時を過ぎていたと思う。白々と夜が明けて来ていた。目が覚めたのは七時過ぎ。少しは眠ったのだろう。
朝食を済ませ、布団をたたみ、夜中に出した扇風機をしまいに行く。納戸には以前叔母が持ってきてくれたポータブルクーラーがあった。昨日のうちに気がついていれば、もう少し快適な夜だったのに。
2024年8月25日日曜日
2024年7月29日月曜日
笹山敬輔『笑いの正解 東京喜劇と伊東四朗』
毎週土曜日は文化放送の「伊東四郎 吉田照美 親父・熱愛(おやじパッション)」を聴いている。
驚かされるのは伊東四朗の記憶力だ。子どもの頃歌った歌や往年のヒット曲を口ずさんだり、共演した俳優との思い出話をはじめ、ありとあらゆることを記憶している。台詞を憶えるのが役者としての最低限の仕事と心得ていて、常日頃から記憶力を鍛錬しているともいう。円周率は1000桁まで諳んじていて、楽屋などで時間があれば呟いているそうだ。歴代の天皇、アメリカの州などもすいすいと口から出てくるらしい。
御歳87歳。来年は米寿を迎える。喜劇の世界はもちろん、現役で活躍する芸能人としても貴重な存在であるが、その脳内に演劇人としての膨大な経験やデータが蓄積されている。伊東四朗にインタビューして、東京喜劇の今昔を解き明かそうとした著者のねらいは正しかった。
伊東四朗は俳優としてじゅうぶん過ぎるほどのベテランであるが、伊東四朗といえば〇〇といった代表的なキャラクターはない。渥美清や森光子、高倉健のような代表作がない。人によってはベンジャミン伊東だ、おしんの父親だと思うかもしれないが、どうにも絞りきれない。もちろん主役の人ではない。いい脇といった役どころが多い。喪黒福造のように主役を張ったところで長くは続けない。ひとつの役にしがみつく野暮さがない。東京の喜劇人なのだ。
僕にとって伊東四朗はてんぷくトリオの伊東四朗だ。押し出しの強い三波伸介と戸塚睦夫の間でひっそりと存在感を示していた。著者の笹山敬輔は1970年代のてんぷくトリオもベンジャミン伊東も知らない。にもかかわらず、伊東の若き日を見事に描き出している。同じ著者の『ドリフターズとその時代』を以前読んだことがある。丁寧な取材をベースにテレビや演芸の、著者自身が体験できなかった歴史を解き明かす。
この本は先のラジオ番組で知った。難しそうな印象だったが、そんなことはなかった。
驚かされるのは伊東四朗の記憶力だ。子どもの頃歌った歌や往年のヒット曲を口ずさんだり、共演した俳優との思い出話をはじめ、ありとあらゆることを記憶している。台詞を憶えるのが役者としての最低限の仕事と心得ていて、常日頃から記憶力を鍛錬しているともいう。円周率は1000桁まで諳んじていて、楽屋などで時間があれば呟いているそうだ。歴代の天皇、アメリカの州などもすいすいと口から出てくるらしい。
御歳87歳。来年は米寿を迎える。喜劇の世界はもちろん、現役で活躍する芸能人としても貴重な存在であるが、その脳内に演劇人としての膨大な経験やデータが蓄積されている。伊東四朗にインタビューして、東京喜劇の今昔を解き明かそうとした著者のねらいは正しかった。
伊東四朗は俳優としてじゅうぶん過ぎるほどのベテランであるが、伊東四朗といえば〇〇といった代表的なキャラクターはない。渥美清や森光子、高倉健のような代表作がない。人によってはベンジャミン伊東だ、おしんの父親だと思うかもしれないが、どうにも絞りきれない。もちろん主役の人ではない。いい脇といった役どころが多い。喪黒福造のように主役を張ったところで長くは続けない。ひとつの役にしがみつく野暮さがない。東京の喜劇人なのだ。
僕にとって伊東四朗はてんぷくトリオの伊東四朗だ。押し出しの強い三波伸介と戸塚睦夫の間でひっそりと存在感を示していた。著者の笹山敬輔は1970年代のてんぷくトリオもベンジャミン伊東も知らない。にもかかわらず、伊東の若き日を見事に描き出している。同じ著者の『ドリフターズとその時代』を以前読んだことがある。丁寧な取材をベースにテレビや演芸の、著者自身が体験できなかった歴史を解き明かす。
この本は先のラジオ番組で知った。難しそうな印象だったが、そんなことはなかった。
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