雨が降ると西武新宿線が遅れる。高田馬場駅で遅延証明書が出される。たいていは10分か15分の遅れであるが、本当はもっと遅れているはずだ。
昨日は電車がゆっくり走ってくれたおかげで村上春樹の『TVピープル』の最後の短編「眠り」を読み終えることができた。
この中におさめられている6つの短編はいずれも幻想的な奇妙な世界を映しだしている。どちらかといえば『世界の終わり…』や『羊をめぐる冒険』に近い世界だと思う。唯一「我らの時代のフォークロア」だけがリアルな描写といえる。この「我らの時代の…」は『国境の南…』のプロトタイプといった短編である。
作家というのはきっとだれでもそうなのだろうが、村上春樹という人は彼の世代と時代を描くのが非常にうまいという印象がある。
(1993.7.1)
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