この作品は、村上春樹氏の作品の中で家庭や家族が描かれているきわめて珍しいものだ。また、一個人の孤独な感情世界を一人っ子という主人公の設定を通して展開している。
ストーリーとしては、いつもの、彼独特のしっとりでもなく、ねばねばでもない恋愛物語であり、随所に乾いたユーモアを織り混ぜている。
僕が感心したのは、10代や20代の描写だけでなく、彼が37歳の女性をみごとに美しく、なまめかしく描いたことだ。そして表情の無さも。
こんなことをいっては世の37歳の女性たちに失礼かもしれないが、僕の思い描ける範疇で、37歳の女性は想像し得ない。美しいのか、魅力的なのか、まったくわからない。でもこの本を読みながら、37歳も悪くないなと思った。
(1993.2.16)
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