カート・ヴォネガット・ジュニアは好きな作家のひとりであり、SFをほとんど読まないぼくにとって極めて特異な存在といえる。
ヴォネガットの本はたいてい早川書房から刊行されていて、そのすべての装丁が和田誠さんによるものだ。和田さんのイラストやレタリングがぼくは好きで、そうでなかったらぼくはヴォネガットを読むことはなかったんじゃないかとも思う。
ヴォネガットの作品でとりわけ好きなのは、『ガラパゴスの箱舟』と『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』の2冊。
一昨日読み終えたのは『ローズウォーターさん…』で7年ぶりに読み返したことになる。
エリオット・ローズウォーターの慈愛深く、あまりに人間臭い、奇怪な行動と思考が何といってもおもしろい。筒井康隆の『富豪刑事』を読んだとき、この『ローズウォーターさん…』の影響を受けてるような気がした。大金持ちと普通の庶民とを痛快に対比させながら、しかも心あたたかくする傑作SFであるという思いをあらためて感じた。
(1993.10.10)
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