2020年10月5日月曜日

池井戸潤『イカロスの翼』

テレビドラマの半沢直樹シリーズが最終回を迎えた。帝国航空再建プロジェクトとそれに絡む政治家の汚職を扱っている。原作でいうと半沢直樹四部作の最終巻である本書がそれにあたる。
ドラマの視聴率は32.7%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)だったという。テレビの視聴形態は変化してきているから、この数字が大きいものなのか小さいものなのかよくわからない。多くの人が視たのだな程度の印象でしかない。それでもSNSなどで、まったく視なかったとか、原作もドラマもぜんぜん興味がないなどと発言する人もいて、世の中はいろいろなんだなと思う。そりゃあNHKの紅白歌合戦を視たことがないとか、大河ドラマや朝ドラをいちも視たことがないという人もいるだろう。世界は多様性に満ち溢れているのだ。
原作とドラマとでは内容は少し異なる。それは松本清張の『砂の器』だってそうだし、山崎豊子の『大地の子』だって映像化されるにあたって脚色されている。今村昌平監督「うなぎ」は吉村昭の短編「闇にひらめく」が原作で、うなぎ獲りの話かと思うとそうではなく、むしろ長編『仮釈放』をベースにした物語になっている。映画を観て、なんだこれ?と思った記憶がある。
東京中央銀行の大和田常務は原作では最初の話で半沢に「倍返し」されて失脚、姿を消すが、ドラマでは最終話まで重要な役を担っている。香川照之という稀代の役者がすぐにいなくなってしまうのはたしかにもったいない。徳川家康を主役としたドラマで豊臣秀吉がずっとライバルとして生き続けるようなものか(よくわからないたとえで恐縮である)。原作の全編を通じて登場するのは半沢と同期で親友の渡真利忍、頭取の中野渡謙、半沢の妻花。エピソードごとにゲストを招いて花を添えるとしても、上記レギュラーメンバーだけでは半沢の「倍返し」ばかり目立ってあまりおもしろくもなかっただろう。香川照之はなかなかいい役どころだった。

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