2026年9月27日日曜日

朝井リョウ『どうしても生きてる』

NIPTという検査がある。
出生前検査(新型出生前診断・非侵襲性出生前遺伝学的検査)という。妊婦の採血によって胎児の染色体異常の可能性を調べる非確定的検査である。なんでそんなことを知っているかというと、NIPT検査は認証を受けた医療機関で受けましょうという動画制作を手伝ったからである。そのほか、病気や障がいを持って生まれてきた子どもたちの保護者を取材する動画も何本か手伝った。今、日本ではこうした子どもたちに手厚い支援が行われている。実際に動画を見てみると障がいがあるから、病気があるからといって暗く生きている印象が全くない。もちろん生まれて来た時はショックを受ける。病気によっては生まれてすぐに手術を受けなければならなかったりする。心配で心配でたまらないだろう。それでも保護者の皆さんは前を向いて、積極的に行政や民間の支援を受け入れながら子育てする。やがて就学時期を迎え、就労支援などを経て、子どもたちは自立していく。ほんのわずかな確率で不便な人生を余儀なくされた子どもたちと保護者の方々は至って明るく前向きである。見ていて微笑ましくなる。
今年になって、何冊か朝井リョウを読んでいる。いずれも長編で短編集ははじめてである。社会や人生のできれば触れたくない側面を強い光を当てるような作品が連なっている。主人公たちの重たい気持ちが淀んでいる。
「籤」という短編で主人公のみのりは夫のすすめでNIPT検査を受ける。結果は陽性。NIPTを知らなかったらああそうですかで読み流すところだったが、なまじ知識があるだけに深刻な気持ちになった。みのりは無事に子どもを産んだのだろうか、その後どんな支援を受けながら子育てしたのだろうかなどとついつい考えてしまう。短編小説だから、フィクションだからそんなことを心配しても仕方ないのだが、もしみのりが実在していたら今ごろきっとしあわせな人生を送っていることと思う。

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