2022年9月8日木曜日

藤田久美子『松本隆のことばの力』

今年になって何回か軽井沢を訪れている。
それなりに用事があって出かけているのであまり観光はしていない。そもそもが軽井沢は、僕にとって降ってわいたような土地であり、多くの観光地、リゾート地同様これまでまったく無縁の町であった。軽井沢まで出かけて、どこか行きたいところはありますか、見てみたいところはありますかなどと訪ねられても咄嗟に答えが思い浮かばない。これが長崎だったら、グラバー邸ですかね、松山だったら道後温泉ですかねなどと恥ずかしながらわずかな知識を絞り出すことはけっして不可能ではない。これまで軽井沢とあまりに接点のない生活を送ってきたせいか、知識がないどころか興味関心がない。
宿所で地図を見る。今ではタブレット端末やスマートフォンで見ることができる。近くに見どころありそうなものはないか眺めてみる。万平ホテルが目に入る。調べてみると由緒あるリゾートホテルのようである。宿所から徒歩15分。朝の散歩にちょうどいい距離だ。
翌朝、川沿いの道を歩いてみる。矢ヶ崎川という。まわりはほとんど別荘か、ときおり企業の保養施設のような建物が見える。木立のなかをリスが走っている。
万平ホテルが見えてきた。フランスの、ドイツとの国境に近いアルザス地方で見かけるような建物である。もちろんアルザス地方に行ったことはいちどもない。軽井沢の町をクルマで移動しているとこのホテルを模した建築物が多いように思った。ある意味軽井沢を象徴する建物なのだろう。
万平ホテルはジョン・レノンの愛した宿として、また宮崎駿のアニメーション映画「風立ちぬ」の舞台として知られる創業130年の名門ホテルである。
「風立ちぬ」といえば、松本隆が作詞し、大瀧詠一が作曲した松田聖子のヒット曲があった。そんなことを思い出す。ここで堀辰雄の『風立ちぬ』を思い出すのが教養ある読書人なのであろうが、そのうちに読んでみたいと思っている。

0 件のコメント:

コメントを投稿