旅をしてみたいと思うわりには旅行に出かけることは少ない。
子どもの頃から家族で旅行することもそれほど多くはなかったし、なにしろ時刻表を眺めるのが好きだったのでそれだけで旅をしている気分になれた。多くはないが本を読んでいるとその舞台に行ってみたい気持ちにはなる。司馬遼太郎『峠』を読んだら長岡に、『胡蝶の夢』を読んだら佐渡島に、吉村昭『ふぉん・しいほるとの娘』を読んだら宇和島に、といった具合に。でもなかなか尻の重い僕は旅に出ない。
以前はよく読んだ本に出てきた土地を歩いてみたものだ(もちろん都内)。高村薫『レディー・ジョーカー』で日之出ビールの城山社長が誘拐された大田区山王。『マークスの山』で看護師高木真知子が勤務する金町の病院。奥田英朗『オリンピックの身代金』に出てくる大田区雑色の北野火薬があった辺りや島崎国男の下宿があった本郷など。当時は仕事も忙しかったから、ロケハンの帰りや打合せの合間に時間を見つけては歩いた。今は仕事も忙しくなく、時間もたっぷりある。なのにフットワークが悪くなっている。
原田マハは2冊目。前回読んだ『さいはての彼女』ではハーレーダビッドソンで北海道に連れて行ってもらった。
今回も旅する短編が多い。
大分県日田市に夜明という駅がある。久大本線と日田彦山線が交わる無人駅。九州で石炭を積んだ貨物列車をSLが牽引していた地域ではないか想像する。表題作の「星がひとつほしいとの祈り」では松山の道後温泉を訪れる女性がいる。松山は一度行ってみたい町である。女友達と男鹿半島と白神山地を訪ねる旅もよさそうだ。ちなみに大分県、愛媛県、秋田県は僕にとって未踏の地である。
佐渡島を旅する母娘。朱鷺は見なくてもいいが、島倉伊之助の生家など遺っているようなら見てみたい。娘夫婦と長良川にやってくる母。鵜飼にはあまり興味はないが、おいしい鮎なら食べてみたい。
いずれも旅情をくすぐる素敵な物語だった。
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