母が亡くなって一年になる。
去年の今頃はあわただしく葬儀を済ませ、区役所に行って年金や保険の手続きをしながら、四十九日の準備をはじめたところだった。8月に納骨を終え、次は一周忌。実家を片付けて、とっておくものは千葉の父の実家に送り、要らないものは処分する。5月までには終わらせようと思っていた。その間、父の実家もフローリングにしたり、エアコンを取り付けてもらったり、壊れたところを直してもらったり。荷物の移動は6月になってしまったが、先週無事一周忌を執り行うことができた。あっという間の一年だった。次は来月の新盆の準備だ。
半村良は映画化もされて話題になった『戦国自衛隊』の印象が強いせいか、SFの作家という認識でいた。何年か前に『小説浅草案内』や『葛飾物語』を読んで下町の風情や人間を描くことのできる人という印象に変わった。
この本はいくつかの短編=人情噺とひとつの長編からなる連作小説である。長編はちょっとしたミステリーで登場人物は短編で紹介されている。
長編では銀座の町役人のもとで働く半吉が殺人事件に引きずり込まれる。時代劇ミステリーといったところか。事件や結末のことは置いておいて、興味深かったのは、半吉が何度も銀座と深川を往復する場面だ。田沼意次から松平定信の時代に移った頃の話だから、銀座から深川へは、勝鬨橋と相生橋を渡って越中島に出るルートはない。京橋から霊厳島、永代橋を渡っていく。洲崎、今の東陽町あたりは海に面した波打ち際だった。そんな情景を思い浮かべながら読みすすめるのが楽しい。
石島町の長屋を訪ねる場面がある。じめじめ貧乏長屋の道ばたに搔きあげてあったどぶどろに半吉は草履を突っ込んでしまう。この物語のなかの象徴的なシーンである。石島町という地名は今も残っている。仙台堀川、大横川、小名木川に囲まれた小さな町である。
半村良は葛飾出身。深川あたりを詳しいのはそのせいかもしれない。
0 件のコメント:
コメントを投稿