2024年11月19日火曜日

森村誠一『人間の証明』

子どもの頃はよく映画を観た。月島のおばちゃん(母の叔母)に連れていってもらった築地の松竹でガメラを観たし、大井町にも映画館がいくつかあった。映画は僕らの世代でも身近な娯楽だった。
中学生、高校生になって映画は観なくなった。この時期は本も読まなくなったし、当時何をしていたか思い出せないけれど、娯楽のない毎日を過ごしていた。
高校時代、唯一観てみたいなと思った映画がある。「人間の証明」である。テレビコマーシャルで大々的に宣伝され、話題作となった。テーマ曲もヒットした。いわゆる角川映画の嚆矢ともいえる作品である。そんな宣伝文句に惹かれて久しぶりに映画を観に行こうと思ったのだ。監督は佐藤純彌、脚本は松山善三。もちろん彼らがすごいスタッフだと知ったのはずっと後のことだけれど、これまでにないスケールの大きな映画という印象を受けた。
映画が公開されたのがたしか1977年。大学受験を控えた高校3年生だった。原作はそれより前に出たのではないか。僕は角川文庫で読んだ。まず本で読むというのは昔からの悪い癖で野球の本や剣道の本、卓球の本など新しいスポーツに興味を持つとまず指南書のような書物に頼ってしまうのである。こういう頭でっかちはたいてい上達なんぞしない。
そういえば作者の森村誠一は昨年亡くなった。没後一年ということで縁のある町田市の市民文学館で森村誠一展が開催されているというニュースが流れていた。行ってみたい気もするが、『人間の証明』しか読んだことのない薄い読者としては敷居が高い。むしろ三鷹市に今年できた吉村昭書斎に行ってみたい。こっちはそれほど敷居が高くない。
『人間の証明』を読んだ記憶はあるが、中身はさほど憶えていない。映画も結局ロードショーで観ることはなく、ずっと後になってテレビで観た。そこでああ、こんなお話だったんだっけと思い出したのである。
母さん、僕のあの記憶どうしたでせうね?