2024年11月26日火曜日

スティーヴン・キング、ピーター・ストラウブ『タリスマン』

今月、定年退職を迎えた。退職に伴う諸々の手続きを済ませ、会社に残してきた荷物を整理した。映像制作を生業としてきた関係でキャビネットのなかは絵コンテなど紙資料とビデオテープがほとんどである。かつてフィルムの時代もあった。作品集と称する十六ミリのリールも持っていた時代もある。どの制作会社にも映写機があった。
映像制作の現場にPCが導入され、普及していったのは1980年代の終わり頃だったと思う。15秒の映像をデータにして電話回線で送るなんて(理論的には可能だったろうが)現実的ではなかった。それだけの容量を格納できる記憶媒体もしかり。
今、プレビューのためのメディアはビデオテープではなくなった。ハードディスクなどの記憶媒体が使われる。データはネットワークで流通する。紙資料にしても同様。デジタルの時代、すべてはデータ化され、カタチもなければ重さもない。
会社に置いてあったテープ類、紙類は処分してもらうことにした。テープの中身はすべてではないが、以前データ化してもらっている。紙資料もあらかたPDF化している。持ち帰るものは何もない。もちろん持ち帰ったところで再生する術もない(そしてもう一度見でみようとはおそらく思うまい)。
ふりかえって見ると僕は人生の大半をカタチも重さも手ざわりも、当然のことながらにおいもないものをつくるために費やされてきたのだ、結果的に。そう思うと少し寂しい。
スティーブン・キングをよく読んだ時期があった。『スタンド・バイ・ミー』『キャリー』『シャイニング』『クリスティーン』など。1990年代半ばくらいだったろうか。そのなかでもお気に入りがこの本だった。
リアルな世界とダークな世界を行き来しながら旅をする少年の物語である。この本はピーター・ストラウブとの共著(マッキントッシュのデータをやりとりしていたと聞いている)であるが、キングの作品をもう一度読むなら断然この作品だ。


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