2024年7月18日木曜日

村上春樹『レキシントンの幽霊』

叔父は七月生まれ。というわけで東京のお盆の時期に墓参りをすることが多い。墓所は青山にあり、墓参りを終えるとカレーライスを食べる。叔父はカレーライスが好物だった。
南青山のギャラリースペースユイで安西水丸Green展が開催されている。墓に行く前に立ち寄る。以前はシルクスクリーンの作品だけだったが、最近はジークレーと呼ばれる新たなプリント方法があるようだ。絵画の世界もデジタルの波が押し寄せている。僕は色鮮やかなジークレーより少しマットで奥ゆかしいシルクスクリーンが好きなのだが。
『レキシントンの幽霊』を久しぶりに読む。
先日『蛍・納屋を焼く・その他の短編』を読んで、そのなかの「めくらやなぎと眠る女」のショートバージョンがこの短編集に収められていたことを思い出したのである(『レキシントンの幽霊』では「めくらやなぎと、眠る女」となっている)。それ以外にもミステリアスで興味深い作品が多い。作者自身があえてミステリアスにしたわけでもあるまい。短編小説の特性として、ストーリーの展開や描写は凝縮される。結果的に読者にとっての不思議さ、不可解さも色濃く印象に残る。仮に「氷男」や「トニー滝谷」が長編であったとしたら、その印象は緩やかに、時間をかけて読者に浸透していったのではないかと思う。
「トニー滝谷」は映画化された。公開は2005年前後だったか。滝谷役はイッセー尾形だった。妻役とアルバイト役の女性は宮沢りえが二役を演じた。どちらかといえば、村上春樹の映画化作品というより、市川準監督作品として観た。映画の細かい部分は憶えていない。機会があればもういちど観たい。
墓参りの後、神田神保町のエチオピアあたりでカレーライスを食べようと思ったが、お腹も空いてきたので青山のツインタワー地下のインドカレーの店に入った。辛口のキーマカレーと中辛の海老カレー。チェーン店なのだろうけれど、なかなかおいしいカレーだった。

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