2024年7月7日日曜日

大川豊『大川総裁の福祉論!』

8050問題が取り沙汰されている。
引きこもりなど問題を持った子どもが50歳になったとき、親は80歳。高齢になった両親はいつまで子どもの支援をしなければならないのだろうか。もし子どもに知的身体的その他の障がいがあったとしたら事態はますます深刻だ。
障がいを持つ子どもに対しては支援する制度が発達段階に応じて整備されているが、特別支援学校卒業後の就労支援はとりわけ重要だ。福祉的就労には就労継続支援A型と就労継続支援B型がある。一般社会への参加のため高度な訓練が必要なA型は企業の福祉枠に就き、雇用契約を結ぶ。当然、給与も支払われる。それに対しB型は雇用契約を結べない。あくまで自立のための訓練であり、給与ではなく工賃をもらう。工賃は作業内容にもよるが、月額1万数千円。これに障がい者年金を加えたところで彼らはどうやって生きていけばいいのか。
著者大川豊が取材した先の福祉施設や就労支援を行う企業、団体の人たちが口を揃えて言うのは障がい者をどうやって自立させるかである。より具体的に自立を促すのは社会参加=就労だろう。描いた絵をレンタルする。布を織って、それを加工してもらい商品化する。知的障がい者のなかには創造的な活動を得意とするものが多い。健常者にはできない発想や色づかいがあるという。
最後に登場するQUONチョコレートなどは画期的と言っていい。もともとはパン製造や印刷事業からスタートした経営者がショコラティエと知り合い、チョコレートの製造販売にシフトしていった。チョコレートはパンのような複雑な工程はなく、リスクも少ない。それでいて高価格。製造工程をいくつかに分け、単純な作業にして障がい者に担当させる。材料を切り刻んだり、石臼で茶葉を挽いたり、梱包用の箱をつくったり。一人ひとりの個性に合わせた仕事を見つける。できることをできる人に任せるのだ。
未来を明るく照らす仕事場がこの国にはまだある。

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