2022年7月10日日曜日

太宰治『新樹の言葉』

ときどき列車に乗って旅がしたくなる。日本全国の鉄路をすべて乗ってみたいとか、最長片道切符で北海道から九州を旅してみたいといった大それた望みはない。今まで乗ったことがない路線を始発駅から終着駅まで乗車できればそれでいい。しかも必ずしも秘境でなければいけないということでもない。近場のローカル線でもいい。ずいぶん昔のことになるが、八高線に乗りたくなって八王子駅まで出かけ、高崎までこれといった風光明媚な景色を見ることもなく乗り通した。その後、こんどは烏山線に乗ろう、両毛線もまだ乗ったことがないなどと思いながら、しばらくローカル線の旅もしていない。
軽井沢に出かける用事ができた。
前日に休みを取って、遠まわりしてみることにする。中央本線で小淵沢に出て、小海線で小諸、しなの鉄道で軽井沢というルートである。6時間くらいかかる。新幹線なら1時間ちょっとであるから、これは贅沢な行程といっていい。
13時前に小淵沢到着。立ち食いそばを食べて、13時36分発の小諸行きに乗る。小諸着が15時52分。車窓から外の景色をながめながらの2時間16分。やはり贅沢な旅だ。
小海線は高原列車と呼ばれる。日本でいちばん標高の高いところを走るからだ。なかでも野辺山駅は日本の普通鉄道の駅としてはもっとも高いところにある。高原列車らしい風景が見られるのは清里から野辺山、小海あたりまでか。小淵沢発小諸行きの後半は、学生や佐久平で北陸新幹線に乗り換えるのであろう出張中の会社員などが増えてくる。観光列車から生活路線に変わってくる。
小淵沢までの特急列車のなかで太宰治の短編集を拾い読みする。そういえばこの本は甲府時代の作品が多く収められていたことを思い出す。太宰はやはりすぐれた日本語の語り部である。
定刻通り小諸駅に到着。かつての信越本線、現在のしなの鉄道に乗り換えて軽井沢へ。小諸は何度か訪ねた町であるが、それについてはまた後日。

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