昨年来、認知症普及啓発の動画制作を手伝っている。その準備のリモート打合せで著者とは何度か同席している(直接会ったことはない)。この人のどこが認知症なのだろう(そういう見方もやはり認知症に対する正しい理解ではないかもしれないが)と思えるくらい、前向きで明るい人である。時間や空間の見当識障害はさほどなく、人の顔と名前がおぼえられないらしい。認知症と診断されたあと、学生時代の部活の仲間で集まったという。帰り際にこんど会ったときには顔を忘れてるけどごめんねと声をかけた。すると仲間たちから君はおぼえてなくても僕たちはおぼえているからだいじょうぶ、と言われたという。
認知症と診断されたときに職場の社長や上司が理解を示してくれた。営業職は難しいから内勤で仕事を用意してくれたという。営業マンとしての丹野は自分も好きなクルマをどう売ろうかと創意工夫を重ねた。それは彼の生きがいでもあった。若年性アルツハイマーの方で仕事を失った人も多いと聞く。そういった点でも丹野智文はいい職場環境と人間関係を持っていた。もちろんそれは彼の持ち前の明るさ、人なつっこさによるかもしれない。それはこの本を読むとよくわかる。
しかしながら生来前向きの著者も苦しいこと辛いことは山ほどあった。それもこの本読んではじめて知った。そして苦しく辛い日々を乗り越えて、いまの丹野智文がいる。彼に励まされ、力を与えられた認知症当事者は数えきれない。まさに「希望大使」を地で行く存在である。
毎年9月は世界アルツハイマー月間。そして21日は世界アルツハイマーデーである。
0 件のコメント:
コメントを投稿