北海道には何度か足を運んでいるが、それより北には行ったことがない。もちろんその先に国境があるためだが、聞けば稚内から樺太(サハリン)の大泊(コルサコフ)へは定期便のフェリーがあるという。千島列島への便はない。ロシア統治下にある樺太と千島列島ははなれているが、同じサハリン州に属している。
以前、仕事で北方領土について調べたことがある。両国の主張、交渉の経緯など知れば知るほど謎だらけだ。ロシアにはロシアの言いぶんがあるのだろうが、主に日本人が暮らしていた島々を武力をもって制圧した彼らは胸を張ってその地を祖国領土と思えるのか。謎である。千島(クリル)列島はカムチャツカ半島の延長上の島々だからロシア領、色丹島、歯舞群島は北海道の延長にあるから、日本領という解釈もあるらしい。だったらとっとと返還すればいい。
毎年8月には戦争関係の本を読もうと思っている。今年はどうしたわけか認知症の本ばかり読んでいた。月末になってようやくこの本を読みはじめた。
千島列島最北の島で終戦直後に戦闘があったことをまったく知らなかった。
アラスカとカムチャツカの中ほどにあるアッツ島を制圧した連合国軍が千島列島を経由して北海道、本州と攻め入ってくるのではないかと推察した日本軍は北方に強力な戦車隊を配備した。ところがこの優秀な部隊はいちども戦闘を交えることなく、終戦を迎えた…。というのが、おおまかなあらすじ。描かれているのは終戦前後のわずかな日々。終戦工作のために応召された3人をはじめとして主役が入れ替わるように物語は少しずつ展開する。
僕は常々、浅田次郎を大人のおとぎ話作家だと思っていたが、この本の中でもファンタジーがある。戦争を題材にした小説には不似合いなのではないかとも思えるが、これも浅田次郎らしさか。
占守島には赤く錆びた帝国陸軍の戦車が遺されているという。なぜソ連は日ソ中立条約を破棄したのか。それもまた謎である。
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