2020年12月12日土曜日

井村光明『面白いって何なんすか!?問題 センスは「考え方」より「選び方」で身につく』

井村光明という名前をおぼえている。どこかで会ったこともあるかもしれない。ないかもしれない。
1993年だったか、94年だったか、僕はある食品メーカー(納豆をつくっている会社だった)のテレビコマーシャルをつくった。CMはそこそこ話題になり、新聞や雑誌で取り上げられ、ちょっとしたヒットCMになった。今回は大きな広告賞でも獲れるのではないかとも思った。国内有数の広告賞の一次選考を通過したという情報も耳にしていた。今はどうなっているかわからないけれども、当時、大きな広告賞は業種ごとに部門分けされ、各部門のなかで高い評価を受けた作品が入賞作品として表彰される。そして各部門の入賞作品のなかから大賞であるとか、グランプリであるとか、その年の代表作が決定する。
僕がエントリーしたのは食品部門。食品というジャンルは景気がよかろうが、わるかろうが広告を発信しなければ商品の売れ行きに大きく影響する。特にナショナルクライアントと呼ばれる大手は次から次へとCMを制作し、オンエアしている。ただでさえ競争のきびしい部門である。そんななかで入賞でもしたら、これはすごいことだと想像するだけでわくわくしたのをおぼえている。
結果的には、残念ながら大きな賞をもらうことはなかった(小さな賞には入賞したけれども)。その年の食品部門にはもっとすごいCMがあったのだ。
お腹を空かせたサッカー少年が家に帰ってくる。母親は簡単にできるレトルトカレーを手ばやく供する。カレーを食べた少年は、当時の人気サッカー選手ラモス(ラモス瑠偉=ブラジル出身、ヴェルディ川崎の中心選手)に変身する。永谷園のJリーグカレーのCMである。Jリーグがはじまって、サッカー人気が沸き起こっていた時流にも乗ったし、アイデアもシンプルで素晴らしかった。
大きな広告賞の食品部門はあらかた、このJリーグカレーだった。そしてこの作品の企画を考えたのが井村光明であった。

0 件のコメント:

コメントを投稿