2019年2月8日金曜日

カート・ヴォネガット『母なる夜』

ここのところ、電子書籍で読むことが多くなった。
もちろん紙でしかない本もあるから、電子版ばかり読んでいるわけではない。しおりを挟んだりする必要がないのはたしかに楽だ。夜、そのまま眠ってしまっても翌朝そのページを憶えていてくれる。ありがたい。
最近、昔読んだ本を再読する機会が増えた。ときどき書棚をのぞいてみる。文庫本はかなり処分したけれど、いずれもういちど読もうと思っていた単行本はそのまま残されている。
白水Uブックスという新書サイズの本がある。今はデザインが変わったけれど、昔はブルーとグレーのツートーンの装幀でよくデザインされていた。
デザインのいい本に弱い。つい手が出てしまう。読んでいるだけなのにちょっとセンスがよくなったような錯覚を与えるのである(それは暗示にかかりやすいという個人的資質にもよるのだろうが)。
さほど多くはないけれど、何冊か読んでいる。ジョン・アップダイク『走れウサギ』、J.D.サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』、ジョン・ファイルズ『コレクター』など。カート・ヴォネガットの『母なる夜』もそのひとつだ。
カート・ヴォネガットというとSF作家という印象が強いけれど、この作品はそうではない(宇宙へ行ったり、時空間を行き来したりしない)。幼少の頃、アメリカからドイツに渡り、売れっ子の劇作家となるハワード・W・キャンベル・ジュニアはナチの広報員となる一方でアメリカのスパイとして活動する。ラジオパーソナリティとして人気を博しながら、本人がそれと把握することなくアメリカ本国へ暗号を送る。もうこれだけで複雑な物語の様相を呈する。
ハワードが実在の人物であったかどうかはわからない。モデルとなる人がいたのではないかと思う。それくらいリアルに構成されている。
本の見返しに「870208」と記されている。32年前の今日、読み終わったということか。
残念ながら記憶はほぼ消滅している。

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