神田川といっても全長25キロメートル近くある。神田川散策といったらやはり高田馬場から江戸川橋あたりをイメージされる方が多いのではないだろうか。南こうせつとかぐや姫のヒット曲「神田川」によって東京ローカルのこの河川は一躍全国的な知名度を得る。貧しい学生時代の思い出を綴った歌であるが、その舞台が高田馬場界隈といわれている。
神田川の源流は井の頭公園である。中野富士見町あたりで善福寺川と合流し、西武新宿線の下落合あたりで妙正寺川と合流する(だから地名が落合というらしい)。上流から中流にかけては坂道が多く、この川が大地を侵食した様子がよくわかる。
とはいうものの、日没もはやい初冬の散歩ということで河口からスタート。行けるところまで遡上しようということになった。
出発は柳橋。
隅田川とは目と鼻の先である。両国橋が見えている。古くは成瀬巳喜男監督の…、幸田文原作の…、芸者置屋の…と映画は思い出せるのだが、題名が出てこない。歳も歳だし、こういうことはときどきある。そのうち思い出すだろうとあまり気に止めないようにするが、気になりだすと気になって仕方がない。主演は田中絹代。高峰秀子も杉村春子も出ていた。K隊長はといえば、柳橋といったら大林宣彦監督「天国にいちばん近い島」でしょう、みたいな顔をして歩いている。
柳橋から浅草橋、左衛門橋を過ぎて、和泉橋の手間でようやく思い出す。「流れる」だ。
その後、神田ふれあい橋、万世橋、昌平橋をわたり、聖橋までたどり着いたところで恒例の反省会と相成った。
著者はいつしか東京の地形に興味を抱き、川の写真を撮りはじめたという。神田川(とその支流)、渋谷川(古川)、石神井川と実際に流れている川のほか、日暮里や国分寺の崖線、四谷の谷底など、まさにかゆいところに手が届くような場所を選んで写真と文を寄せている。
誠にありがたい一冊である。
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