2011年8月2日火曜日

境治『テレビは生き残れるのか』


センセーショナルなタイトルではあるが、おそらく放送や広告に携わっている人たちが薄々感じとってきた危機感をそのままテーマにしている本だ。
テレビは4大媒体のうち抜群のパワーをもって、高度成長を支えてきた。マスメディアの“マス”を体現していた。もちろんテレビのもつ影響力が近い将来劇的に減少するということもないだろう。ただその視聴形態は大きく変わってくる。
テレビはメディアとしての“マス”の役割を終え(というよりマスメディアと呼ばれる巨大な媒体がすでになくなりつつある)、これからはミドルメディアとして位置づけられて、インターネットやソーシャルメディアと友好的な関係を築いていくであろうというのが著者の論。大きな成長を終えたところにマスは不要ということだ。
当然クリエイティブのあり方も変わってくる。100案のアイデアを30時間かけて1案に絞り込む、そんなやり方は成長を前提とできない今日にあってはムダな要素が多すぎる。少数精鋭でコンパクトな議論でパパッと決めて進めていく、そう変えていかなければならないという。
しかしながらプロアマ混淆の映像コンテンツ氾濫の時代にあって、コンテンツ制作の環境も激変することが必至だ。これまで以上にスピードとセンスが求められ、しかも作業規模はコンパクトになっていく。ビジネスとしての将来が不透明ななか、劣悪な作業現場に身を投じる若者たちははたしているのだろうか。
テレビの将来は見えてきた。しかし映像コンテンツを底辺で支える人たちの明日はまだ見えていない。

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