ちょうど読む本がなくなって、朝とか深夜とかちょっと本屋行ってくる、みたいなことができないタイミングでのそっと娘の部屋に入って、なにか本あるかと訊ねる。何冊か見繕ってくれる。梨木香歩『ピスタチオ』、安野光雅『口語訳即興詩人』など。
さっと読めて重たくないやつ、とさらにぜいたくを言って絞り込み検索をかけると、じゃ、これと本棚から出したのが志村ふくみだった。
まったく予備知識なしに読んで、巻末の略歴でああ、こういう人なんだと知る。
ちょっとためになる文章と言葉の数々。
「一つの線を引く。生きる上でそれをしなくてはならない時がある」
「色に名前をつけるの愛情である」
「手によってすべての仕事は行われる。手の中に思考が宿るといってもいい」
などなど。
往き帰りの地下鉄の中で読み終わってしまったけれど、読んでいる時間以上に多くの時がそのなかを貫いている、おりかさなっている。
そんな一冊。
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