2009年10月2日金曜日

トルーマン・カポーティ『叶えられた祈り』

夏がフェードアウトして、冬がフェードインしてくる。
季節のオーバーラップの中間点が秋というわけだ。10月は毎年そんなふうに、冬のように晴れたり、夏のように雨が降ったりする。
カポーティに関していえば、ぼくは初期の、いわゆるイノセンスものが好きで、よく読んだ。
この『叶えられた祈り』はセンセーショナルな未完の傑作だという。そこらへんの知識はまったくなく、ただ本屋の棚の中に見慣れないカポーティの文庫を見つけたというだけで手にとった。
当初、この本の一章として書かれた「モハーベ砂漠」は『カメレオンのための音楽』に短編として収録された。たしかにそんなタイトルの小編が収められていたという記憶がある。なんなんだ、これは、と思った記憶もある。が、それ以外のことは全然思い出せない。もういちど読んでみようか。たしかまだ捨ててはいないはずだ。
タイトルの『叶えられた祈り』は、聖テレサの言葉「叶えられなかった祈りより、叶えられた祈りのうえにより多くの涙が流される」から来ているという。解説の川本三郎は、正確にはその意味はわからないとしながらも、『冷血』の完成と成功によって祈りが叶えられたカポーティに訪れた新たな苦しみをあらわしているのではないかと言っている。
手もとにあるカポーティを片っ端から読み直してみたい。この本の感想はそれからでも遅くはないだろう。



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