2025年8月29日金曜日

半藤一利『歴史と戦争』

先日、知人に招かれて軽井沢を訪れた。東京駅で新幹線に乗り込むときと軽井沢駅に着いて降りたときとはあきらかに空気が変わっていた。昼近く、気温はおそらく30℃を超えていたかもしれないが、不快な暑さではない。多くの人が避暑にやってくるのもむべなるかなである。
翌日はやくも帰京するため駅まで送ってもらう。ところが駅前にクルマは入れないという。多くの警官が交通整理をしている。聞けば、上皇さま、上皇后さまがその日から一週間ほど軽井沢で静養するのだという。駅近くの交差点から歩いているとちょうど到着したようだ。物々しい警備のなか荷物のチェックを受け、お出迎えエリアに足を運んだ。上皇さまを拝見するのは何年か前の東京ドーム以来だ。都市対抗野球の決勝戦をネット裏の二階席で観戦しておられた。
その次の日だったか、上皇さまが大日向開拓地を訪問したことがニュースで伝えられた。大日向開拓地は戦後旧満州から帰国した人たちが切り拓いた地域である。上皇さまは平成天皇の時代から戦争で亡くなられた方々に対して継続的に慰霊を行ってきた。この開拓地を訪ねたのも戦中、戦後苦労された方々を思いやってのことだろう。
半藤一利は昭和5年生まれ。上皇さまより3歳年上になるが、ほぼ同時代を生きたと言って差し支えないだろう。長く雑誌編集者として活躍していた関係で本格的に執筆活動をはじめたのが1990年頃から。この本はその膨大な著作の中の「おいしい」ところだけを抜き出してまとめたものだ。400ページ以上の大作をじっくり読むのもいいが、テンポよく断片に接するのもまた楽しい。著者の断片のなかには東京大空襲の体験も語られている。火災から逃れ、中川に落ちたところを何者かによって船に引き上げられたという。上皇さまは東京大空襲の報をどこで聞き、どんな思いを持ったであろうか。
昭和20年。上皇さまは小学校6年生。半藤一利は中学3年生だった。

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