2024年12月31日火曜日

北村匡平『遊びと利他』

小学生の頃、螺旋形の滑り台があった。公園の遊具としては大きなものでどこの公園にもあるというわけではなかった。学区域内の公園にはなかったと思う。
中央の支柱があり、螺旋状に金具が固定されている。その金具が滑り台本体を支えている。高さは3~4メートル。後ろに付いている梯子段で頂上に上り、ぐるぐる回りながら滑り降りる。
高学年になり、この滑り台で鬼ごっこをするのが流行った。4~5人で学区外の公園まで遠征する。ルールはない。滑り台を下から上に上ったり、梯子段を降りたり、梯子段から滑り台に移ることができる場所もあった。滑り台を支える金具を伝って移動することもできた。地上に降りることもできたが、その遊具を離れて遠くに逃げるのは反則だった。誰が考えたか知らないが、スリリングな遊びだった。
今、公園に危険な遊具はなくなっている。回転塔とか箱型ブランコなど。自治体の管理が優先されているからだ。それらに代わって複合遊具が主流になっている。
ロープを使って斜面を登り、櫓の上に行きなさい、できない子は横にある梯子段で登りましょう、上に着いたらすべり台で降りるか、吊り橋を渡って反対側の櫓に行きましょう、といった具合に子どもたちの遊びがマニュアル化されている。ルールが画一化されていて動きが少ない。ちょっと遊んだらすぐに飽きる。著者北村匡平はこれを「余白」の縮減した遊具と規定する。
たとえば斜面だけの遊具が紹介されている。斜面を上って滑り台にする。子どもは滑り台を逆から上るのが好きなのだ。滑り方も頭から滑り降りたり、転がりながらと多種多様な遊び方を子どもたちは発見し、挑戦する。その斜面には柵がない。多少の危険は伴うがそうしたことを通じて子どもたちは自らの限界を知り、危険を体得するという。
この本のテーマとなっている「利他」という概念はわかりにくい。わかりにくいが、読んでいると何となくわかってくる。不思議な一冊だ。

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