2024年5月18日土曜日

三遊亭圓生『江戸散歩』

麹町、神田、日本橋、京橋、芝、麻布、赤坂、四谷、牛込、小石川、本郷、下谷、浅草、本所、深川。東京府に15の区が置かれたのは1878(明治11)年。1889(明治22)年に誕生した東京市はこの15区を市域としていた。府下の荏原郡、南豊島郡、東多摩郡、北豊島郡、南足立郡、南葛飾郡の町村は1932(昭和7)年に東京市に編入され、新たに20区が新設。東京35区が誕生した。1943(昭和18)年に東京府は東京都となり、東京市は廃止される。35区はその後再編され、今の23区になった。
江戸の市街は概ね東京15区だった。その名残りが多く見られるのがこの地域である。今で言う山手線の内側と日本橋、浅草、本所、深川である。品川の戸越は江戸越えの村というのが地名の由来とされている。この辺りは江戸ではなかったのである。
子どもの頃から落語は細々とながら好きな演芸だった。ユーチューブなどでよく聴くようになったのはここ10年くらいだろうか。大人になってから落語好きな知り合いが多くいたことに驚いている。
この本は三遊亭圓生が訪ねた東京、すなわち江戸の町や寄席などが数々の思い出とともに紹介されている。ラジオやテレビがなかった時代、寄席は映画館とともに娯楽の花形だった。都内各所にたくさんあった。また落語に出てくる町も江戸の町だ。ほほう、あの噺のあの長屋は上野広小路にあったのかなどと思いを馳せる。隔世の感がある。
実は圓生をあまり聴いたことがなかった。古い噺家で好きなのは古今亭志ん生。立川談志や志ん朝を聴くことも多い。圓生は食わず嫌いというか、端正な顔立ちと語り口が軽妙な噺家という印象が強く、そうしたイメージがかえって面白みに欠けると勝手に思い込んでいた。
せっかく圓生に江戸を案内してもらったのだからと思い、「髪結新三」と「紺屋高尾」を聴いてみた。この本の他、著書は何冊かあるようだ。もう少し読んでみたい。

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