2024年5月11日土曜日

山口拓朗『言語化大全』

自民党派閥による政治資金パーティー裏金問題では要領を得ない政治家たちが説得力に乏しい説明を繰り返している。いつどこで誰が何のために慣例化したのか、まったくわからないまま法改正の手続きをすすめている。説明責任を果たさなければならないと言うけれど説明責任なんて果たさなくてもいい。わかりやすく説明してくれればそれでいい。
うまく言語化できないという悩みに応えるのが本書である。言語化力を身につける上で大切なのは語彙力、具体化力、伝達力。とりわけ具体力が鍵を握ると著者は言う。よく整理されていてわかりやすい。具体化力のベースは5W3H。いつどこで誰がなぜ何をどのようにどれくらいでいくらでをできる限り明確にすることが基本である。「説明責任」を果たせない方々にぜひ読んでもらいたい。
若い世代にとってコミュニケーション能力は身に付けたいスキルのひとつになっている。「コミュ力(りょく)」と略されることも多い。
背景にはコミュニケーション能力の必要性が増した社会があるのだろう。適切に言語化することで正確に意思疎通をはからなければならない時代なのかもしれない。曖昧な物言いや仲間内だけにしか伝わらない話し方がここ何年かでずいぶん少なくなってきたような気がする。昔みたいに「言わなくたってわかるだろう」という世の中ではなくなっているのだ。
オフコースのヒット曲に「言葉にできない」(作詞作曲小田和正)があるが、言語化できないのと言葉にできないのとでは少し違うと思っている。世の中のあらゆるものが言語化できるというわけじゃない。事実とか事象ではない事柄、たとえば感情世界や感覚世界などは言語化するのは難しい。もちろん何かにたとえるとか、類似したもので説明することは決して不可能ではないだろう。ただそのものずばり、その本質を言葉にするのは困難な作業だ。
言葉にできないものは言葉にできないままにしておくのがいいと思う。

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