2022年5月25日水曜日

安藤元博『広告ビジネスは、変われるか? テクノロジー・マーケティング・メディアのこれから』

長く広告の仕事に携わってきたが、広告の未来は、などと訊ねられてもおいそれとは答えられない。僕が主として関わってきたのは広告表現の企画立案、所謂クリエイティブであって、実をいうとそれ以外のこと、メディアやマーケティングのことなどはまったくの素人同然である。
ここ10年ほどで広告やマーケティングの世界にもデジタルの波は押し寄せている。費用対効果の高いメディアを瞬時に選択し、効果的な表現をたえず見直し、スパイラルアップさせて、興味関心のある潜在的な顧客に有効な情報をタイミングよく刷り込んでいく、みたいなことが行われるようになってきている。
これまで主にテレビCMの企画を主にしてきた。ざっくり不特定多数に情報を届けるこのメディアはデジタルの真逆にあった。テレビCMが完成し、オンエアされる。クライアントからは話題になっているとか、注文が増えているとか、社内の評判がいいなどと言われる。それでいて半年後には再び複数の広告会社と競合プレゼンテーションの知らせが来る。広告、とりわけテレビCMに対する厳密な効果測定は、少なくとも僕たちの時代には行われ得なかった。よく伝わる表現があったとしても、しかるべき時間帯にある程度の出稿がなければ、それは届かない。大量に出稿される広告であっても、魅力のない表現、あるいは反感を買うような表現ならばマイナスの効果しか残さない。広告が効果的に迎え入れられるためにあらゆる要素を効果的に組み立てなければならないのだ。そうした意味からするとデジタル化された広告ビジネスは昔にくらべ、格段の進歩を遂げるだろう。効果が測られることによって、表現が萎縮しなければいいと思うし、クリエイティブに携わる人たちのモチベーションが下がらなければいいと思っている。
この本では統合マーケティングのプラットフォームが語られている。専門分化と統合という難しい課題に広告ビジネスはさらされている。

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