2022年5月23日月曜日

指南役『黄金の6年間 1978-1983 素晴らしきエンタメ青春時代』

今年は沖縄返還50年にあたる。NHK朝の連続ドラマも沖縄を舞台にしてはじまった。
先日の新聞に石垣出身の元ボクシング世界チャンピオン具志堅用高のインタビュー記事が載っていた。沖縄が日本に復帰した年、インターハイに出場するため具志堅は本土に渡る。パスポートはもう要らなかった。
その4年後、1976年10月10日。高校の文化祭が終わった夜、僕はひとり飯田橋でラーメンを食べていた。店内のテレビはボクシングの試合を中継していた。テレビから沸き起こる歓声に加えて、店にいた多くの客たちもどよめく。WBA世界ライトフライ級チャンピオン具志堅用高誕生の瞬間だった。
JR飯田橋駅から九段に向かって歩く途中に「ひろかわ」というとんかつ屋があった。後で知ったことだが、石垣島から上京した具志堅はこの店でアルバイトをしていたという(僕も駅前で何度か見かけたことがあった)。その日歓声を上げたラーメン屋のお客さんは地元で働く具志堅をずっと応援していた人たちだったに違いない。
著者の指南役によれば、「黄金の6年間」とは1978年から83年までの6年間をさす。東京が最も面白く、猥雑でエキサイティングだった時代、音楽や映画、小説、テレビ、広告、雑誌などメディアを横断してさまざまな分野のクロスオーバー化が進み、新たな才能が生み出された時代であるという。TBSテレビで「ザ・ベストテン」や「3年B組金八先生」がはじまり、村上春樹が小説を書きはじめた時代だ。
こういった時代区分は恣意的なものが多いと思われるが、事例が多く積み重ねられることによって不思議と説得力が生まれてくる。それと同時にこの6年間の前後の時代にも光が射し込んでくる。とりわけ黄金時代の夜明け前は興味深い。
どういうわけか、この本を読み終えて、具志堅用高の世界王座奪取を思い出した。それから1年と2ヶ月。黄金の6年間がはじまる。そして4月に僕は大学生になった。

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