2021年10月26日火曜日

秋山具義『世界はデザインでできている』

先日、世田谷文学館でイラストレーター安西水丸展を観、今月は東京オペラシティアートギャラリーで和田誠展を観た。どちらも全国を巡回する国民的展示である。安西にはイラストレーターという肩書きが付いているが和田にはない。和田誠はアートディレクターであり、装丁家、絵本作家、アニメーション作家、映画監督、作曲家とまさにマルチな分野で活躍してきた。基本はイラストレーターに違いないけれど、彼の活動の数々を規定する言葉は見出しにくかったのだろう。
一線で活躍する以前の少年時代のスケッチや絵日記なども展示されていた。安西水丸もそうだったが、絵を描くことが本当に好きだったんだなということがよくわかる。子どもの頃から似顔絵が得意だったようだ。先生や友だちの似顔絵が多く遺されている。会ったことも人たちばかりなのに、どことなく似ているなと思えてしまう。
和田誠はライトパブリシティ時代の日々を『銀座界隈ドキドキの日々』という本に綴っている。映画を愛する彼は当時新宿にあった日活名画座のポスターを描き続けた(無償で)エピソードをそのなかで紹介している。青年和田誠の仕事が大きなパネル一面に展示されている。圧巻である。
ちくまプリマー新書は若い世代を対象に普遍的でベーシックなテーマを掘り下げるシリーズである(プリマーとは初歩読本、入門書という意味だ)。初学者や若者を対象にしているとはいえ、大人が読んでもためになる本も多い(菅野仁『友だち幻想』などは思わずうなってしまうほどの一冊だった)。
不勉強な僕は秋山具義という名前を知らなかった。知らなかったけれど読んでみるとデザインというひとことで語るには難解なテーマをやさしく説き明かしている。筑摩書房はなかなかいい人選をしたのではないかと思う。
若い人に限らず、たとえば広告やデザインの仕事をはじめたばかりの人たちにも秋山具義はわかりやすく声をかけてくれるに違いない。

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