2021年2月15日月曜日

近藤克則『長生きできる町』

「近ごろの若い連中は仕事に前向きでない」などとついこの間まで若かった連中が嘆いていた。
どんな話かというと、たとえば映画製作の会社にいながら、小津安二郎も黒澤明も山田洋次も知らない、作品を見たこともないことが嘆かわしいということだ。あくまでたとえばの話である。
仕事の関係で福祉の本を読んでいる。
日本では人口が減っていく。人は長生きする。医療や介護、福祉に多額の費用が使われる。このままいくと財政が破綻するのでは、などとささやかれてもいる。それとは別にできることなら介護などされたくない、すなわち健康寿命を延ばしていきたいというのが多くの人の本音だろう。そこに介護「予防」というキーワードが浮かんでくる。
厚生労働省でも介護予防の取り組みがすすめられている。地域ボランティアによる集いやサロンの開設、いわゆる通いの場が生まれている。介護施設や病院を新設するより、費用もかからないし、健康的である。
著者は地域ごとの格差、とりわけ健康格差を調査している。
予防には一次予防(健康増進)、二次予防(早期発見、早期治療)、三次予防(再発、悪化予防)があるという。著者が提唱するのは0次予防。「人を変えるのではなく、環境を変えることでその中にいる人たちの行動を変える」という考え方である。たとえば近隣に広い公園がある地域では運動機能が低下している人が少ないという調査がある。公園面積の広い地域の高齢者はスポーツなどの会に参加している割合も多いらしい。なぜ運動をしないのかという原因だけを考えるのではなく、原因の原因を考えることが重要だという。そのなかで運動をしやすい環境をつくることの重要性が見えてきたのだと。
近ごろの若い連中を嘆いている諸氏よ。彼らがなぜ勉強しないのか、なぜ前向きにならないのか、その原因を考えてみよう。そして原因の原因を考えて、彼らをとりまく環境を変えてあげよう。そして行動を促そう。

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