たまには読むんだが、文章力が上達する的な本はあまり信じていない。
それと実はあんまりノンフィクションは読まない。文章が淡々としていて、どこで笑っていいのか、泣いていいのかときどき難しく感じるから。ちょっとした言葉遣いの綾やレトリックが豊富な創作のほうが読んでいてなじむ。
野村進というノンフィクションライターをぼくは全く知らなかった。その著作を読んだこともなく、名前すら知らなかったのだ。ただ本屋でそのタイトルを見て、手に取り、ぱらぱらっとめくってみて読んでみようと思った。
とてもよい一冊だ。文章を生業とする著者の誇りと誠実さがきちんと伝わっている。単なる経験談だけでなく、自らの仕事で培ってきた著者の人間としての“豊かさ”を垣間見ることができる。自ら孤独な長距離走者と名づけるだけあって、そのストイックで背筋を伸ばしたフォームに好感が持てるし、その姿勢と、確固たる方法論といかにも現場的なある種行き当たりばったりなところも包み隠さず語れるところがすばらしい。
ぼくはノンフィクションライターとかジャーナリストをめざす若者たちがいまどれほどいるのか実感はないし、身近なところで野球の選手をめざしたり、編集者をめざしたり、アーティストをめざしたり、医者や教師をめざしたりする友人はいたけれど、文章で身を立てようとしたものがいなかった。そういうこともあって読みはじめた最初は、この本はいい本だけどいったい誰に向けて書いているんだろうと思った。それくらい真剣勝負な本だと感じたわけだ。
でもね、いちばんこの本のすばらしいところは、漢字と仮名の使い分けが自分と似ていて、とてもしっくりしたことだったりするんだよね。
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