8月はあっという間に過ぎ去っていった(今年の8月に限ったことではないけれど)。
別段、何かしていたわけでもない。この暑さのなか迂闊に外出はしないよう気をつけていた。母が入院していた病院に支払いに行った。南房総に墓参りに行った。図書館まで予約した本を借りに行き、返却に行った。母が退院するので手続きに行った。郵便局と銀行を何度か往復した。少し仕事もした。それくらい。後はオリンピックを見て、高校野球を見て、MLBを見て、じっとして動かない台風10号を見て、要するにテレビを視ているいるうちに8月が終わってしまったのだ。
それにしても今年の甲子園は接戦が多く、ジャイアントキリングが何試合かあってずいぶん楽しめた。霞ヶ浦、小松大谷、大社が印象に残る。来月以降もとっとと過ぎ去ってはやいとこ甲子園がはじまらないかとさえ思う。
ジャン=ジャック・ルソーの『新エロイーズ』を読んだのは大学3年生のときだ。卒業論文はルソーについて書こうと朧気ながら考えていて、すでに何度か読んでいた『エミール』以外の作品を読んでおこうと思ったのかもしれない。
ルソーというと『学問芸術論』『人間不平等起源論』『社会契約論』などやや小難しい著作もあるが、『新エロイーズ』は書簡体の恋愛小説である。高貴な女性と貧しい男性との恋はスタンダールの『赤と黒』を思い出させるが、当時の読書記録によるとスタンダールを読んだ直後に『新エロイーズ』を読んでいる。立て続けに読んだので印象がごっちゃになっている。
ルソーの本をもう一度読んでみるならこの本だろうと思う。手もとに岩波文庫が4冊ある。しかしながら頁をめくった途端にその字の小ささに気が遠くなるのである。当時の僕にはこれくらいの大きさの文字が苦も無く読めたのだ。
21歳の8月は今よりもっと時間がゆっくり流れていたに違いない。暇で暇でたいしてすることもなかったという点は今も昔も変わらないとして。
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