2024年6月16日日曜日

勝浦雅彦『ひと言でまとめる技術』

近い将来、広告の仕事からリタイアする。それでも広告の本はときどき読むようにしている。コピーやデザイン、映像、コミュニケーションに関するものである。
以前はすぐれたコピーはどうすれば書けるかみたいな内容を自らの経験を踏まえて語られる本が多かった。広告制作のプロフェッショナルがその分野の初心者や志望者に向けて書いていた。最近はコピーを書くためというより、コミュニケーション能力を向上させるための指南書といった趣の本が増えている(ような気がする)。プロのコピーライターが若いコピーライターに向けて、というよりもっと幅広く学生や若いビジネスマンに役立つスキルを提供している。
プレゼンテーションというと広告関係の仕事をしている人にとってはクライアントのコミュニケーション課題にどのような基本的な考え方(ストラテジー)を持って、どう具体的に解決をはかっていくか(表現)を提案する場である。絵コンテやカンプを提示して広告主の理解と納得を得ることが最終的なイメージである。これは広告業界のプレゼンテーションの一例に過ぎず、世の中のどんな業種であれ、依頼主の課題解決のための提案作業は存在する。これら世に数多いるプレゼンターはすぐれたプレゼンターではあるもののプレゼンテーションそのものを語る専門家ではない。もちろんスティーブ・ジョブズのようなクリエイティブな人間もいるにはいるが。
その点、広告クリエイティブを生業としてきた者は「わかりやすく伝える」プロフェッショナルでもある。
著者勝浦雅彦は広告会社の営業からキャリアをスタートさせた。その後クリエイティブの世界に身を投じ、幾多のプレゼンテーションを通して、言語化力、伝達力の重要性を学んできた。それらの経験をとりまとめて後世に遺しておくことは広告制作のプロフェッショナルが果たさなければならない社会貢献なのではないだろうか。
そんなことを思わせる一冊である。

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